硝酸・亜硝酸

【English】
Nitric acid; nitrous acid

日本酒製造において、微量の硝酸イオン・亜硝酸イオンの存在は重要である。水に含まれる硝酸は塩類の形で存在し、水中の含有量はNO3のppm(百万分率)で表される。

生酛系酒母育成においては、まず硝酸イオンの存在下で硝酸還元菌という細菌が酒母中に育ち、その作用で硝酸塩が還元されて亜硝酸イオンNOが生成する。この亜硝酸が酵母の育成を抑制し、その間に乳酸菌が育ち始める。乳酸菌が増殖すると乳酸が生成され、その乳酸によって硝酸還元菌は死滅する。亜硝酸もN2やNO2、NH3などに分解されてやがて消失する。ここで初めて有用清酒酵母が選択的に増殖できる状態になる。亜硝酸があるかどうかは亜硝酸の濃度を調べる市販の試験紙をつかって簡単に知ることができる。よって酒母に清酒酵母を添加する場合は、酒母中の亜硝酸反応が消えてから添加する。

宮水の硝酸量は20~30ppm程度である。しかし、多量の硝酸の存在は、亜硝酸・アンモニアと共に動物性窒素化合物に由来することが多く、下水などからの汚染の疑いがあるので好ましくない。

硝酸はブルシン法・アニリン法などにより比色定量するが、単に定性分析にとどめ着色反応の程度に応じて「少量」「極少量」「微量」「痕跡」「検出せず」などの表現を用いる場合も多い。