速醸酒母・速醸系酒母

【English】
Yeast starter of the sokujō (“quick-fermenting”) school ; sokujō yeast starter

速醸系酒母は明治の末期(1900年頃)に江田鎌治郎によって考案され速醸酒母に代表される一群の酒母育成法であるが、基本的には乳酸菌の生酸によらず、乳酸を添加することにより雑菌類の増殖抑制および淘汰を行い、純粋培養酵母を初期に大量に添加することによって酒母の酵母純度を高水準に保つ、という二つの原理に基づいた酒母育成法である。

生酛系酒母にくらべて「気温の高低に影響されないで安全に酒母の育成ができる」「短時日に仕上がり労力の節減面で効果が大きい」「性質既知の優良酵母が高純度で育成できる」「一定の品質の酒母が容易に育成できる」などの利点がある。速醸酒母、高温糖化酒母などがある。

速醸酒母の仕込温度は18~20℃が一般的で、乳酸を添加した仕込水水麹を約3時間行い酵母添加を行った後、蒸米を投入して仕込みを完了する。仕込後の櫂入れは蒸米が軟らかいために行わず仕込後8~10時間後より約12時間汲掛け(酒母に円筒形の枠を入れ内側に滲み出てきた液を枠の外に戻す作業)を行い品温の降下と均一化および糖化の促進を図ることが多い。汲掛け後品温は10℃前後で打瀬(酒母の加温を始めるまでの低温期間)を経過し3~4日目の初暖気、4~5日目の膨れ、5~6日目の湧付き、11~12日の熟成という経過が一般的である。

酵母添加を可能な限り早い時期に大量行うのが酵母純度を高める要点であり、添加酵母量と汲掛後の品温降下の程度が以後の経過の遅速を決定する要因となる。

酒母工程図(高温糖化酒母)

酒母工程図(速醸酒母)