灘・灘五郷

【English】
Nada; the “Five Gō” of Nada

灘とは本来、風波が荒く航海の困難な海のことであるが、酒類業界では通常、清酒の主産地である神戸市東部から西宮市今津に至る大阪湾に面した沿岸地帯を指す。

この地域は、北は六甲連峰を背にし、南は大阪湾を望む東西に長い帯状の地域で、冬季は明石海峡を抜ける西風や六甲おろし(六甲山麓に吹く強い風)の寒風が強く、この気候が灘という名称の由来であると思われる。

このような地形がもたらす気候、風土は、酒造りにきわめて適していることに加え、この地域の特殊な地層を通って湧き出る酒造りに最適な宮水の存在も大きい。更には、酒造原料として大粒品種の酒米が六甲山系の北部地域に産出すること、また、海岸地帯であるため宮水や清酒の船による大量輸送が可能になったこと等、灘の酒造業にとって有利な条件が揃っていたため、この地域に古くから酒造業が発展してきた。

自然風土に恵まれた灘は、卓越した伝統ある酒造技術とあいまって芳醇な灘酒を生み出し、「灘の生一本」の産地として広く知られるようになった。灘五郷とはこのような灘酒の産出地を指し、西から西郷御影郷魚崎郷西宮郷今津郷の五郷を総称している。なお、郷とは村の集合体を意味する。

現在の神戸市灘区新在家から西宮市今津に至るこの沿岸約12kmの地域が灘酒の故郷である。

昔の灘五郷